米軍がイラク核施設空爆、事態の進展を見守る金市場 | ゴールドマーケット解説 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

先週(6月16日の週)の動き:中東情勢の緊張継続も一定の織り込み、NY金は週末に3,400ドル割れ、JPX金も週初最高値更新も上げ幅削る

先週(6月16日週)のニューヨーク金先物市場(NY金)は、前週末6月13日に付けた終値ベースでの最高値3,452.80ドルを上回ることができず、反落となった。イスラエルによるイラン核関連施設への空爆をきっかけに高まった地政学リスクを手掛かりにした買いは、週初の6月16日こそ一時3,476.30ドルまで買われ、4月22日の取引時間中の史上最高値3,509.90 ドルに対し戻り高値を更新したものの、それ以上の上値は重かった。

先週は6月19日にジューンティーンス(奴隷解放記念日)の祭日を挟んだが、週前半は、それでも中東情勢への警戒が下支え要因となり、NY金は3,400ドル台を維持して推移した。

戦況はイスラエル優位という印象に

交戦状態に入ったイスラエルとイランだが、イスラエル側の事前準備が奏功したようで早々にイラン首都テヘランへの制空権確保を宣言。戦況はイスラエル優位という印象に傾いた。

6月16日には、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が中東や欧州の当局者らの話として、「イランがイスラエルとの紛争終結と、自国の核開発に関する米国との交渉を再開したい意向を、仲介役を通じて示唆した」と報じた。またロイターも同様の働きかけを「カタールやサウジアラビア、オマーンの湾岸3ヶ国に対し求めた」と報じた。

イスラエルが仕掛けたイランに対する攻撃が、他国を巻き込むという懸念が後退するとともに、原油輸送ルートの要衝・ホルムズ海峡の封鎖など、エネルギー供給混乱につながるとの懸念も後退した。

トランプ米大統領はG7を途中退席しNSCを緊急招集

6月17日にカナダ・カナナスキスで開催されていた主要7ヶ国首脳会議(G7サミット)を途中退席したトランプ米大統領は、帰国後に国家安全保障会議(NSC)を緊急招集していた。その際にイランに複数あるウラン濃縮の地下施設への攻撃を「真剣に検討している」とし、米軍を使うことに前向きになっていると複数の米主要メディアは伝えていた。

6月19日には、「イランへの攻撃の是非を2週間以内に判断する」と表明。米国の軍事介入は差し迫っておらず外交的解決に向けた交渉余地があるとの見方が市場に生まれた。

6月20日のNY金は、売り先行の流れの中で一時3,356.20ドルまで安値を見て、3,385.70ドルで終了した。週足は前週末比67.10ドル、1.94%の反落となった。終値ベースでの最高値更新はならなかった。レンジは3,356.20~3,476.30ドルと、週初の戻り高値更新から週末にかけて売られたことで、値幅は120.10ドルとなった。

国内金価格も週初に最高値を更新

以上のようなNY金の値動きをほぼ映す形で、国内金価格は週初6月16日に史上最高値を更新することになった。

大阪取引所の金先物価格(JPX金)の16日の終値は史上最高値を更新し1万5943円に。取引時間中の高値も1万6131と最高値を更新した。ただし、翌日から週末にかけ4日続落で、6月20日の終値は1万5729円となった。週足は前週末比158円1%の反落となった。値幅は402円と前週の532円からは縮小した。

なお先週(6月16日週)の金の店頭小売価格(10%込み)は、6月16日に付けた1万7678円が過去最高値となっている。

年内2回の利下げ見通しを維持したFOMC、メンバー間での見解の相違広がる

中東情勢に市場の関心が向けられる中、6月17日~18日の日程でFOMC(連邦公開市場委員会)が開かれた。市場の予想通り、政策金利の据え置きを決定。注目された年内の利下げ想定回数も、2回との前回見通しを維持した。

FOMCメンバーによる最新の四半期予測(中央値)では、2025年の経済成長見通しを引き下げた一方、失業とインフレの見通しは引き上げた。年内の利下げ予想については、参加者19人(投票権のない地区連銀総裁を含む)中7人が0と予想(3月時点は4人)し、2人は1回の利下げを予想するなど、2回とはなったものの、少なくとも2025年の金利の方向性に関して、メンバー間で見解の相違が広がっていることが明らかになった。

パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、「米国経済は極めて堅調であり、関税の影響は現時点ではまだ完全には表れておらず、今後数ヶ月は影響が見られないだろう」と述べた。

ウォラーFRB理事の発言に注目集まる

FOMCに関連して注目されたのが、6月20日に米CNBCのインタビューでのウォラーFRB理事の発言だった。「関税によるインフレへの影響は短期的なものにとどまる公算が大きい」という以前からの認識を示した上で、「7月にも利下げできる」との考えを表明した。また、「現在の政策金利(FFレート、4.25~4.50%)は、景気を刺激も冷やしもしない中立金利水準の推計値を1.25~1.50ポイント上回っている」との見解も明らかにした。つまり、現行の金利水準は景気抑制的との判断になる。

利下げのタイミングを巡りパウエル議長の見解とは異なり、FRB執行部の中で意見の割れが見られている。トランプ米大統領が利下げを再三要求する中で、次回7月29~30日のFOMCが注目される。

今週(6月23日週)の見通し:中東情勢の進展とパウエルFRB議長の議会証言に注目、NY金3,400ドル上下50ドルをコアに双方向、JPX金1万6000円を挟んだ上下300円のレンジ

イラン国会は原油海上輸送の要衝・ホルムズ海峡併催を承認

今週(6月23日週)も中東情勢の行方が金価格の値動きに影響を及ぼしそうだ。広く報じられたように6月21日に米軍はイランの主要核施設3ヶ所に対する空爆を実施。トランプ米大統領は国民向け演説でウラン濃縮施設を「完全に破壊した」と述べた。イランに対し全面降伏を求め、対応次第では「今後の攻撃は、はるかに大規模なものになる」とした。

ただし、米紙ニューヨーク・タイムズは米国とイスラエルの当局者の話として、今回最大の攻撃対象となったイラン中部フォルドゥの濃縮ウラン施設について「深刻な被害を受けたが完全には破壊されていない」と伝えた。仮にそうであれば追加攻撃の可能性も残される。

対してイラン側は「重大な国際法違反だ」と反発しているものの、目立った軍事的反応は日本時間6月23日午前の時点で伝えられていない。イラン国営テレビは6月22日、イラン国会が米国への対応として、ホルムズ海峡の閉鎖を承認したと報じた。最終決定は事実上の最高指導者であるハメネイ師の意向が大きく影響するとみられる。ホルムズ海峡は原油海上輸送の要衝(世界の石油供給の2割が通過)だけに、仮に閉鎖となると市場の混乱は必至となる。金市場は事態の進展を見守り、様子見の待機状態にある。

パウエルFRB議長、半期に一度の証言

今週は6月24日(火)にパウエルFRB議長が下院金融委員会の公聴会で、半期に一度の金融政策報告について証言する。翌25日(水)には上院銀行委員会でも証言を行う。「関税の経済への影響がより明確になるのを待ちたい」と強調し、慎重な政策運営の正当性を説明するとみられる。議員との質疑応答に注目したい。

米経済指標では6月27日(金)に発表される5月の個人消費支出(PCE)コア価格指数に注目。引き続き小幅な伸びになる見込みとなっている。

そうした中でNY金は中東情勢の動きに敏感に反応し、3,400ドルを挟んだ上下50ドルをレンジに上振れ、下振れありと想定。JPX金については前週同様に1万6000円を挟んだ上下300円のレンジを想定する。

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